2007.01.27    「お代わりできますか」   荒井 久
 
 
美味しいと評判のある小さなレストランで。
男性(夫)が料理を作り、女性(妻)がフロアを担当する。
そんな家族経営のようだ。

僕は友人と注文を終えて出来上がるのを待っていた。
店はそんなに混んでいない。

4人席を空けて、向こうの4人席。
お父さんが2人の小さなお子さんを連れて席を取った。
「ねえ、ねえパパ。ご飯のお代わりできるの」
そんな会話が聞こえてきていた。

注文をした後に、そのパパはこう聞いた。
「あのう、ご飯のお代わりはできますか」
すると、ひときわ大きめの声でこう言い放った。
「有料です!」
日頃から頑固者一家には見えてはいたが。

「美味しいものをサービスしている。これ以上はサービスできない」
そんな店の主張が込められているように思えた。

子供たちは自宅でご飯を少なめに盛り付けられて、「お代わりしてね」と聞いているに違いない。
なおもパパに質問した。
「ねえねえ、お代わりできるの」
「お代わりはできないんだって」とパパは答えた。

きっと子供たちは少しずつ盛り付けられて、何度もお代わり。
そんなやり取りが嬉しくて仕方ないだけに違いない。
大人ほどにたくさん食べられるはずも無い。

なんだか話がかみ合っていなくて。
僕は少しいらいらした。

話は別だが。
僕はこんなことを思い出した。
年配の寿司職人さんと美味しい天麩羅屋さんに同行したときのことだ。

天麩羅コース料理でたくさん出てきた。
美味しい。
最後のご飯は少し少なめだった。

同行の寿司職人さんは食べ終わったご飯茶碗を少し突き出してこう言った。
「追加をおねがいします」

その響きには、「追加料金を払いますので」という考えが込められているように思えた。
細かなことだが、作り手への尊敬の念が込められている。

「いやいや、追加料金は要りませんよ」ということだったかも知れない。
それ以上の会話はないのに、しっかりと心遣いや話がかみ合っていた。

 
   
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