2007.02.28    「男気なC君の物語    荒井 久
 
 
実際にあった話。友人から聞いた話だ。

「誤って台所で転び、包丁が胸に刺さってしまいました」とC君から電話。
医者の診断では「胸部挫傷で10日間の安静が必要」という。
深さ3センチの刺し傷で、もうほんのわずかで肺に達するところだった。

「え、もう4日も無断欠勤をしていて、今日から出てくるはずだったでしょ」
すぐ上の上司も、あまり強くは叱れない。
何かある。なにやら胸騒ぎする。
誤って、包丁が胸に刺さるなんて、想像もできない。
ありえない話だ。

周囲の話では、女性問題で悩んでいることをもらしていたと言う。
「危ない」。とにかくC君を訪ねてみよう。

上司はすぐにC君のアパートに向かう。
しかし、たどり着いてドアをノックするものの、どうしても開けてはくれない。
部屋は暗いままだが、怪我を負っているし、外出のはずもない。
急いで、C君のお母さんに連絡、事情を説明した。

ようやくお母さんも駆けつける。
どうしたらいいのか。
いくらお母さんが呼びかけても、沈黙が続くだけ。
大丈夫だろうか。いったい、部屋の中で何が起こっているのか。
連日のように報道される殺傷事件が頭をよぎる。

とにかく、なんとか中に入ろう。
アパートの大家さんに連絡、鍵を借りることにした。
まもなく、通報を受けた警察官も駆けつけた。

60.7 18.7

 
   
  ご意見ご感想はこちらまで。  
  <<back  


Copyright 2002-2006 SoRiQ Inc.All Rights Reserved