2009.04.08    「写す力5 横丁のとんがったジイさん」   荒井 久
 
 
最近はあんまり見ていなかった存在。
それが、ちょっととんがった横丁のジイさんだ。

僕は今、そんなジイさん(失礼!)とお仕事を一緒にしている。
楽しいこと、この上ない。

間もなくわかることだから、もうばらしてしまおう。
このジイさんは、松原元信さん、73歳。
早稲田大学政経学部を出て、ある企業に就職。
47年間、この会社で典型的なサラリーマン生活をおくる。

社長にはならなかったが、最後の7年間は副社長だった。
実質的なトップだったんだろうと想像する。

そのジイさんが70歳で引退した時。
村上春樹訳の「ロング・グッドバイ」(原著はレイモンド・チャンドラー)が刊行される。
ジイさんは、すぐに買い求めて読んでみることに。
40代で読んだ、同書の清水俊二訳「長いさよなら」の感激がよみがえったからだ。

ところが。
どうも違う。

どこが違うのか。
清水訳を引っ張り出し、丸善に原著を求めにいったり。

どうやらここで。
横丁のジイさん精神が本領を発揮する。
徹底的に、この3冊を読み比べたのだった。

そんな読み比べの原稿がソリックに持ち込まれた。
その内容からは、昔の横丁のジイさんの風情が目に浮かぶ。

著者、訳者の3氏に最大限の尊敬の念を持ちながらも。
「俺の目は節穴じゃないぞ」
「ちょっと変じゃございませんか」
「うーーん、これが名文というものですな」

その姿はウィットに溢れ、慈悲に溢れ、愛に溢れ。
しかし、ちょっとばかりガキ大将でもあり。
少年のようでもあり。

そうだ。
横丁のジイさんは大人(たいじん)になった少年だ。

松原さんという横丁のジイさん。
しっかりと、この原稿で自分自身を書き写している。

きっと。
長いサラリーマン生活で「写す力」を高めてきたに違いない。

僕たちが学ぶことは。
「写す力」の向上は、「人生の生き様を磨くこと」ということだろうか。

 
   
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